けんさアラカルト
手軽にできるTDMシミュレーション
田島 裕
1
1佐賀医科大学附属病院検査部
pp.1466-1468
発行日 2000年11月1日
Published Date 2000/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905665
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薬物によっては治療濃度域の狭いタイプのものがあり,実際に患者の体内での濃度を確認しながら治療を続けなければならないことが多々ある.一連のこのような操作はTDM(therapeutic drug momitoring)と呼ばれており,近年盛んに行われるようになってきたが,真の“TDM”とは,ただ単に「患者から採血して薬物濃度を測定すれば事足りる」というような簡単なものではない.つまり,TDMを行うに際しては,(確かに薬物の血中濃度を知ることは,非常に重要なことではあるが)測定と同時にシミュレーションを行って,患者固有のパラメーターを(実測値から逆算して)得ておくことが極めて大切な作業なのである.
例えば,心不全の患者では循環血漿量が増加しているので,体重あたりの分布体積は増大するし,肥満者では,体重あたりの分布体積を下方修正しなくてはならない.また,(当然のことながら)臓器の機能が低下しているのであれば(例;肝不全,腎不全),半減期は延長することが多いが,どの程度延長しているのかについては,(TDMを行わずに)事前に知ることができない.また,薬剤を投与してから血中濃度がピークに達するまでの時間が遅れていたり,半減期の延長が認められた患者の場合には,(他の検査で突き止められていなくとも)薬剤の吸収・分布過程,あるいは臓器の機能に異常がある可能性があり,これに気づかないと用量を誤ることがある.
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