技術講座 病理
子宮頸部細胞診の読みかた
平井 康夫
1
1癌研究会附属病院産婦人科・細胞診断部
pp.1109-1114
発行日 2000年8月1日
Published Date 2000/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905573
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新しい知見
子宮頸部悪性腺腫(adenoma malignum)は,正常子宮頸部腺と酷似する腺管が子宮頸部筋層深く浸潤し,臨床的には極めて悪性の様態をとる頸部腺癌のまれな亜型の1つである.細胞自体の異型性は非常に少ないため,通常の病理形態学的診断基準では,その正確な診断は困難である.子宮頸部細胞診による悪性腺腫の診断基準の1つとして,検体上に出現する粘液がパパニコロウ染色で黄褐色の色調を帯びることが注目されている,通常の粘液は暗紫色に染まるため,悪性腺腫由来の黄褐色調粘液を区別できることが多い.
最近,ラット胃幽門腺粘液に対するモノクローナル抗体であるHIK1083(KANTO Reagents, Tokyo)を用いた免疫組織化学的検索で,悪性腺腫の粘液が特異的に,高頻度に染色されることが判明した.HIK1083による免疫組織学的染色は,悪性腺腫の補助診断法の1つとして有望視されている.従来のパパニコロウ染色による細胞標本で注目されていた悪性腺腫に特徴的な責褐色調粘液は,HIK1083による免疫染色により認識される胃幽門腺化生由来の粘液と同一であることが示唆されつつある.組織診では診断が困難な悪性腺腫ではあるが,子宮頸部細胞診によれば,粘液の色調の所見などから正確な診断が得られることが意外なほどしばしばある.
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