Laboratory Practice 病理 細胞像からここまでわかる
子宮頸部(7) 子宮頸部腺癌の細胞診
都竹 正文
1
,
手島 英雄
2
1癌研究会附属病院細胞診断部
2癌研究会附属病院婦人科
pp.440-442
発行日 2001年5月1日
Published Date 2001/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905802
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子宮頸部の腺異形成(glandular dysplasia)は扁平上皮の異形成に匹敵する良性とも悪性とも判断しかねる腺上皮の異型病変を呼び,境界病変として位置付けられている.腺異形成は,子宮頸癌取扱い規約の組織分類と診断基準のなかで,核の異常が反応性異型よりも高度であるが,上皮内腺癌の診断基準を満たさない腺上皮の病変をいう,とある.腺異形成の診断に際しては,反応性異型および上皮内腺癌との鑑別が問題となる.これらの鑑別には,細胞及び核の大きさ,形状,N/C比,核クロマチンの状態,核小体の形態,核分裂像などの細胞異型と,細胞の重層化,乳頭状や篩状構造などの構造異型を参考とし,さらに共存する炎症反応の有無とその程度なども参考にする.著しい炎症や放射線照射により生じる内頸腺上皮の反応性異型は,核の大型化,多核化,クロマチンの増量,核小体の出現を伴うが核分裂像に乏しく,細胞の重層化などの構造異型はほとんどない.
これに対し腺異形成では,核の変化が反応性異型よりもさらに強く核分裂像も出現するが,上皮内腺癌よりも軽度である.細胞の偽重層性は見られるが,乳頭状や飾状構造は見られない,とされている.細胞診による腺異形成の診断は現段階では極めて困難であり,組織学的診断基準の細胞異型と同様に,上皮内腺癌よりも軽度であるといった程度の極めて曖昧に表現せざるを得ない.
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