増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 9 臓器移植と臨床検査
3.造血幹細胞移植におけるキメリズム解析
神田 善伸
1
1国立がんセンター中央病院幹細胞移植療法室
pp.973-974
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905535
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はじめに
同種造血幹細胞移植は前処置と呼ばれる大量抗癌剤や全身放射線照射などの治療によって患者(宿主)の造血系を撲滅した後に,ドナー由来の造血幹細胞を移植することにより,新たな造血系を構築する治療法である.この間に骨髄や末梢血の血液細胞は宿主細胞からドナー細胞に入れ替わり,最終的にすべてがドナー由来の細胞になる(full chimerism).しかし,ときにドナー由来の細胞と宿主由来の細胞が共存した状態が持続することも観察される(mixed chimerism).特に,移植後汎血球減少が持続し,移植片不全(graft failure)が疑われる場合などには,その時点での造血がドナー由来か患者由来かによって,その後の治療が変わってくる場合がある.その他にも表に示すような場合にキメリズム(chimerism)解析が必要になる.しかし,通常の検査では血液細胞の由来を決定することは困難であり,以下に述べるような検査が行われている(参考文献は総論的なものだけにとどめた.個々の文献は総論より引用可能である).
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