増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 8 遺伝子関連検査
1.染色体検査
1)染色体検査の原理・種類・目的および外部委託のしかたと注意点
田村 高志
1
1杏林大学保健学部臨床遺伝学教室
pp.932
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905517
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はじめに
染色体は細胞分裂中期にのみ観察することができる.そのため,染色体検査は分裂している細胞をとらえなければならない.しかし,検体として細胞を採取してそのままで染色体を観察できるのは,骨髄細胞あるいは生殖細胞のように活発に分裂・増殖している組織に限定されてしまう.検体採取が容易にでき,分裂増殖している細胞を得るためには培養液を用いてin vitroでの組織培養をする必要がある.この組織培養の技術から,TjioとLevan(1956年)は流産胎児の肺組織の培養細胞から得られた標本でヒトの染色体が46本であることを最初に報告した.これ以後,組織培養の技術向上,組織培養用培地の改良と開発,Gバンド法などの分染法による染色体解析法の導入によって,ダウン症候群を代表とするさまざまな染色体異常症が次々に報告された.
染色体と造血器腫瘍との関係が論じられるようになった契機は,染色体数が46本と報告された4年後の1960年に慢性骨髄性白血病(CML)患者に特異的に見られるPhiladelphia(Ph)染色体の発見である.Ph染色体は22番染色体の長腕が欠失した微小染色体である.後にその欠失した部分が9番染色体と相互転座していることが判明した.その後しばらくの間,造血器腫瘍に特異的な染色体異常の報告はなかった.
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