検査データを考える
心電図ST-T変化
前田 泰宏
1
,
伊東 盛夫
2
1宗像医師会病院循環器科
2宗像医師会病院健診センター
pp.283-287
発行日 2000年3月1日
Published Date 2000/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905323
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ST-Tの正常所見
1.ST部分
ST-Tに先行するQRS波は左室,右室を含む心室筋全体の急速な脱分極によって生じた電気現象を反映したものであり,心室収縮の開始の時期に相当する.脱分極はナトリウムイオンの急速な心筋細胞内への流入で生ずる.脱分極は隣り合った心筋細胞に次々に伝達されていく(図1).心臓の電気的興奮の源は右心房と上大静脈の接合部にある洞結節の自動能である.洞結節に起こった電気的興奮は心房に伝導し,房室結節を経由してヒス束,左右両脚,プルキンエ線維を経て心室固有筋へ伝達される.
プルキンエ線維の伝導速度は3〜4m/secに達するが,心室固有筋では伝導速度は低下し,40〜50cm/secとなる.プルキンエ線維は心室内膜に網目状に分布しており,心外膜側にはあまり見られない.したがって,心室の脱分極は心内膜側から心外膜側に向かって進行する.しかし,心室筋の細胞内活動電位の持続時間は,心内膜側のほうが心外膜側より長い.その結果,心内膜側のほうが心外膜側よりも興奮の開始は早く起こり,興奮の消退は遅れる.このことは,正常および異常時におけるQRS波とT波の方向の関係を考えるうえで重要である.
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