増刊号 緊急検査実践マニュアル
各論
1.生化学検査
9)AST,ALT,GGT 臨床編
中野 哲
1
1大垣市民病院
pp.733-735
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903840
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検査の意義と目的
AST(GOT),ALT(GPT)はアミノ酸とTCAサイクル(triccarboxylic acid cycle)の代謝産物との間のアミノ基転移反応を触媒する酵素である.図に示すごとく,多くの臓器に分布して存在する.前者は心臓,肝臓,骨格筋,腎臓に多く見られ,後者は肝臓に最も多く見られる.これらの臓器の障害でこれらの酵素が血液中に逸脱する.この血中の逸脱の程度から逆に臓器の障害度を見ることができる.なお,ASTにはアイソエンザイムがあり,AST-m(GOT-m)はミトコンドリアに局在し,細胞質に局在するAST-s(GOT-s)に比し血中に逸脱しにくく,半減期が短いために,総AST活性に占めるAST-m活性の比が30%以上になることは少ない.AST-mの血中への逸脱が見られた場合は,ミトコンドリアの破壊時やミトコンドリアの機能低下に伴う膜透過性の亢進時に見られるもので,障害の程度の強さを示す.なお,ALTにも2つのアイソエンザイム(ALT-s,ALT-m)が存在するが,ASTと異なり,ミトコンドリア分画内のアイソエンザイム(ALT-m)活性は極めて低く,血清中のALTはほとんど細胞由来(ALT-s)である.
一方,GGT(γ-GTP)はグルタチオン代謝に密接な関係を有する酵素である.グルタチオンは肝ミクロゾームの薬物代謝に関与し,多くの物質の解毒,抱合,排泄にかかわっている.
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