オピニオン
移植と臨床検査—移植をtriggerにして脱皮・独立
浅利 誠志
1,2
1大阪大学医学部附属病院臨床検査部
2大阪大学医学部附属病院感染症対策部
pp.1037
発行日 1998年11月1日
Published Date 1998/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903642
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脳死患者からの臓器移植法案が成立するまでの過去10年間,大阪大学では移植開始に備え多数の移植医師が海外留学,動物実験および移植ネットワーク作りなどに多大なる時間と労力を費やしてきました.毎年交わす年賀状には,「今年こそ移植開始!」という言葉を何回見たことでしょう.常に前向きな医師らの真摯な姿勢は,怠惰な私に“我を忘れる根気とその道に生きんとする努力”というエネルギー源を与えてくれました.一方,そのころ検査側では,移植が開始されると面倒な検査が増えてシンドインチャウカ?(訳:肉体的,精神的に疲れるのでは?)……と受け身な姿勢でした.しかし,移植に命をかけ,自称“必殺仕掛人”といっておられる髭のS教授に私はうまく誘導されて,いつの間にか所属長の理解のない状態で移植検査に全面協力する立場になっていました.それから,複数の仲間が協力し,我を忘れてから約7年,移植検査体制としての人員補充が遅れがちであること以外は,技術的に焦ることもなくほぼ準備は整いました.他施設から見ると「大学病院だから当然」と思われる方が多いでしょうが……実際はどうして,どうして.封建的制度の大河が脈々と流れ,そして大学病院の掟の森が続く中を,立場の弱い技師たちが誰にも頼らず移植検査の細道を築き上げることは容易なことではありませんでした.
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