トピックス
ストレス・マーカー
古屋 悦子
1
1住友金属バイオサイエンス研究開発室
pp.717-721
発行日 1998年7月1日
Published Date 1998/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903572
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■ストレスとは
H. Selyeが医学部の学生であったとき,そこにいる患者はみな病気に見える(all patients look sick)といって笑われたが,Selyeはすべての患者の示す共通の症状「食欲なく,体重は減少,生気なし」に目を向け,まさに病気である症候群(the syndrome of just being sick)とした.すなわち,個々の疾患に特異的な症状(鑑別診断)ではなく,非特異的な共通項に目を向けていた.
その目をもって,後に動物実験で,Selyeはいかなる有害刺激に対しても,それが肉体的なものであろうと精神的なものであろうと,その種類に関係なく生体が反応して示す共通の症状(副腎皮質の肥大・機能亢進,胸腺・リンパ組織の萎縮,胃・十二指腸潰瘍の発生)を発見した.Selyeは,生体に加わる各種の有害刺激(ストレッサー)に応じて体内に生じた歪みをストレスとした.ストレッサーが加えられたときの生体の反応を,上記臓器の変化とともに時間経過でとらえ,初期の警告反応期(ショック),抵抗期(適応状態)を経て,さらにストレッサーが過剰であったり,長期にわたると疲弊期となり,ときに死に至るとし,それを全身適応症候群(general adaptation syndrome)とした.
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