今月の表紙
マイクロパーティクル
巽 典之
1
,
津田 泉
1
1大阪市立大学医学部臨床検査医学
pp.1120
発行日 1997年12月1日
Published Date 1997/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903289
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筆者らの研究室は釜が崎と通天閣が見える崖の上に立っている.窓越しに見える威容を誇るビルの中には暴力団事務所もあり,その日暮らしの労働者も闊歩している.考えようによっては社会の縮図を見るには最適な場所に大学病院が位置していることになる.この雑多な窓外の風景は,その昔,血中のゴミと記載された血小板を筆者らに思い起こさせてくれる.
血小板は活性化されたり,物理的刺激を受けると,粘着・変形・凝集し,巨大塊となる.ところが個々の血小板は変形するだけでなく,細胞外に微小なベジクル(膜小胞体;マイクロパーティクル),すなわちplatelet-derived microparticles(PMP)を形成し放出する.このPMPは,血小板由来の内部顆粒や膜性微粒子を含み,血小板崩壊の指標となるだけでなく,凝固第Ⅴ,Ⅷ,Xa因子への結合部位が多くあり,プロトロンビンキナーゼ活性作用を有する.尿毒症・糖尿病・脳梗塞などではPMPが増加することから,これが止血血栓形成に重要な役割を果たしているとされる.
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