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急性大動脈障害の平滑筋ミオシン重鎖による検査
鈴木 亨
1
,
矢崎 義雄
1
,
永井 良三
2
1東京大学医学部第3内科
2群馬大学医学部第2内科
pp.877-878
発行日 1997年9月1日
Published Date 1997/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903238
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はじめに
急性の大動脈障害は致命的な合併症を併発する可能性があり,的確な早期診断と治療が必要である.急性の大動脈疾患としては,日常診療で遭遇する際,最も多くみるのは大動脈解離と大動脈瘤の破裂である.また,外傷の患者では外傷性大動脈破裂に,まれではあるものの,遭遇することがある.しかし,これらの急性の大動脈疾患の臨床症状は多彩であり,そのため急性の大動脈障害を疑わない場合,診断は極めて困難である.CT,MRI,血管造影,心臓超音波(特に経食道)などの画像診断法などの診断法や治療法の進歩が日進月歩である今日でも,見落とされたり,診断が遅れる症例が少なくない.
筆者らは本課題に対し,心筋・骨格筋では発現していない平滑筋に特異的なミオシン重鎖に注目し,大動脈障害発症時に大動脈中膜の平滑筋細胞から血中に放出される平滑筋ミオシン重鎖のイムノアッセイを開発し,これを用いて迅速かつ簡便な急性の大動脈障害の血清診断法を確立した.
このような巨大分子の構成成分の大部分をGAG鎖が占めていること,優れた蛋白分解酵素インヒビターの開発が不十分であったことなどから,今から十数年前まではコア蛋白部分を無視して,糖鎖部分(GAG)の組成や合成活性に注目が集まり,生化学的・組織化学的には主としてGAGに関する研究が行われてきた.
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