輸血検査メモ
輸血副作用調査
田所 憲治
1
1日本赤十字社中央血液センター
pp.259
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903153
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同種血輸血は一般医薬品と異なり,生きた他人の血液をそのまま輸注する一種の臓器移植であり,副作用を完全には排除できない.献血ごとにHBs抗原,HBc抗体,HCV抗体,HIV抗体,HTLV-Ⅰ抗体,梅毒血清反応,ALT検査を行っているが,検査には限界があり,window periodの感染や未知の微生物の検出はできない.血漿分画製剤以外の輸血用血液からウイルスを完全に不活化,除去する方法もまだ開発されていない.またABO,Rh(D)血液型,不規則抗体を検査しているが,他の血液型や蛋白の違いにより遅発性の溶血反応,急性呼吸障害,GVHD,アナフィラキシーなどの免疫学的副作用が起きる可能性がある.このように副作用を完全には排除できないが,医療の進歩に即した,たゆまない安全性の向上が求められている.そのためには検査法の改善,知識の普及とともに,実際に発生した副作用の収集,原因の解析が不可欠である.薬事法により赤十字血液センターには医師から報告された副作用の収集,解析,厚生省への報告(死亡,重症例,新規で軽症でないもの)が,また医師にはこれに協力することが義務づけられている.赤十字血液センターは1992年に医薬情報部を設立し,輸血に関する各種情報の提供とともに副作用症例の全国的な収集,解析を行っている.その報告数は1993年の224件から年々増加し,1996年には約700件に及び,この制度の定着がうかがわれる.
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