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微量残存白血病
平井 久丸
1
1東京大学医学部無菌治療部
pp.381-384
発行日 1997年4月1日
Published Date 1997/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903036
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■微量残存白血病
白血病は比較的未熟な造血細胞の腫瘍化であり,通常単クローン性である.急性白血病の診断時には成人の場合,1012個程度の白血病細胞が体内に存在する.化学療法で完全寛解に導入された場合にも,白血病細胞は1010個程度は体内に残存している.骨髄移植などによりさらに治療された場合でも,白血病細胞は107から108個程度は体内に残存するといわれる.したがって,白血病細胞がどの程度残っているかをモニターすることは,治療効果の判定,治療方針の決定,予後判定にとって重要な問題である.このように,治療後に白血病細胞が少量残存する状態を微量残存白血病(minimal residual disease;MRD)という.白血病は通常,遺伝子変異に基づく細胞の単クローン性増殖の病態をとるため,原因遺伝子変異や免疫系遺伝子再構成を利用して,単クローン性白血病細胞の残存状態をモニターすることができる.
白血病に対する微量残存白血病の診断はさまざまな観点から進められており,方法論としても各種の技術が取り入れられている.白血病は大別してリンパ性白血病と非リンパ性白血病に分類される.この分類には免疫グロブリン遺伝子およびT細胞抗原受容体遺伝子を用いる診断法が有用である.リンパ球ではB細胞およびT細胞の分化の初期に,それぞれ免疫グロブリン遺伝子およびT細胞抗原受容体遺伝子が再構成されることが知られている.
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