オピニオン
検査の成熟化
植田 寛
1
1佐賀医科大学附属病院検査部
pp.314
発行日 1997年4月1日
Published Date 1997/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903021
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●検査を取り巻く環境変化
検査を取り巻く経営環境は,これまで経験したことのない,従来の手法が通用しない厳しい構造不況の様相を示している.環境の変化を考えるうえで,主要なポイントを3つ挙げる.①検査のマルメ化:検査室の運営上多大な影響を与えたのが,検査のマルメ化であり,強化されればされるほど,外注に絞り出される院内検査が増加する.そしてこの背景には,そうせざるを得ない,国による医療費抑制策の強化,検査浸けと批判の高い検査差益の存在,出来高払いの見直しなど,医療の抱える構造的問題が存在する.②技術開発の停滞:保険収載項目は,トータルで増加はしているものの,実際には似たような項目が増えているだけで,次代をリードするようなブレーク・スルー技術が育っていない.唯一,遺伝子検査の新しい技術に期待がかかるが,収入の面からはいまだ微々たるものである.③検査の情報化:基本的に情報化とは,“物を動かす社会”から“情報をやり取りする社会”に変化が進むことを示している.検査の現場でもベルトラインシステムの導入などで,2〜3名の技師で生化学件数の80%程度をほとんど直接手を触れずに処理可能となり,検査をするという部分の比重はますます軽くなった.多量に生み出されるデータを前に,臨床検査は“情報処理検査”といった姿に変貌した.
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