増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅶ.抗菌薬の抗菌力試験
9.抗真菌薬の感受性試験
山口 英世
1
1帝京大学医学部細菌学講座
pp.262-265
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902794
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はじめに
真菌症の治療に際して,高い有効性が期待できるような抗真菌薬の選択を可能にする適切な感受性試験が不可欠であることは,抗菌薬の場合と同様である.近年,抗真菌薬として最も汎用されているフルコナゾール(FLCZ)に対して低感受性を示すCandida属菌種として知られるC. glabrataやC. kruseiの分離頻度が上昇する傾向にあることや,AIDS患者などからFLCZ耐性を獲得したC. albicans菌株が分離されることが,感受性試験の必要性を一段と強く認識させる結果となっている.
感受性試験が有用であるためには,感性株と不感性(耐性)株の識別能および試験の再現性が高く,しかも試験を比較的簡便に実施できる方法が標準化されていることが要求される.この困難な課題に長年取り組んできた米国NCCLSは,1992年に酵母の薬剤感受性を測定するための基準実施法(M27-P)を提案した1).抗真菌薬の感受性試験法はまだ完全に標準化されたわけではないが,少なくとも酵母に関する限り,M27-P(NCCLS提案法)を基準とすることには世界的にみてもほぼ異論のないところであろう.現在研究者の関心は,この原法を実用に即するようにより簡便化することや糸状菌へ適用することなどへと移りつつある.
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