増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅶ.抗菌薬の抗菌力試験
5.抗菌薬の選択
菅野 治重
1
1千葉大学医学部臨床検査医学
pp.249-253
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902789
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はじめに
薬剤感受性検査にどのような抗菌薬を選択するかは感染症の治療に影響を与える重要な問題である.しかし日本には感受性検査に採用すべき抗菌薬に関して,公的機関から提唱された指針が存在しないため,各検査室では細菌検査に関係する医師や検査技師が独自に抗菌薬を選択しており,とても文明国とは思えない状況にある.この状況は臨床における抗菌薬の使用法においても同様で,日本では,その感染症が適応症として認められ,さらに起炎菌が適応菌種に指定されている抗菌薬ならば,どの抗菌薬を治療に用いても保険請求が可能である.このため日本では治療上の抗菌薬の選択順位が極めて曖昧である.
このような状況では検査室は感受性検査を行う抗菌薬の種類を医師の要望に従って選択せざるを得ず,これが検査室の負担を著しく増加させる原因となっている.しかし検査に用いる抗菌薬の数を無原則的に増加させても,治療に役だつ情報を豊富にはできない.抗菌薬を選択する際には,治療実績,体内動態,耐性機構に対する安定性,副作用などの多くの因子を考慮する必要がある.
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