技術講座 微生物
抗菌薬による細菌の形態変化―β-ラクタム系抗菌薬を中心に
菅野 治重
1
1医療法人社団徳風会高根病院
pp.437-442
発行日 2007年5月1日
Published Date 2007/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101706
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新しい知見
細菌の形態は棲息する環境の温度,pH,浸透圧,抗細菌薬の存在,などによって影響を受けるため,異常形態を示す細菌が検出された場合は,その臨床的意義を解釈するために患者および検体に関する総合的な情報が必要となる.抗菌薬投与中の患者の喀痰や尿などの検体から異常な形態を示す細菌が顕微鏡検査で検出されることは多く,特にグラム陰性桿菌に対してβ-ラクタム系抗菌薬が投与されている場合に細菌の形態変化が生じる場合が多い.異常形態を示す細菌の多くはL型菌であり,L型菌にはβ-ラクタム系抗菌薬は無効である.異常な形態を示す細菌を認めた場合は患者に対する抗菌薬投与の有無を確認し,抗菌薬投与例では投与されている抗菌薬が細菌学的に無効である可能性が高いと判断して医師に抗菌薬の変更を促す必要がある.また抗菌薬が投与されていない患者の検体から異常な形態を示す細菌が検出された場合は検体の,保存温度,保存時間,pH,浸透圧などを調べて異常な形態が生じた要因を検討し,その臨床的意義を判断する必要がある.
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