増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅳ.検体の採取・保存・搬送
1.検体採取 1)呼吸器系材料および穿刺液の検体採取
浦 敏郎
1
1国立循環器病センター臨床検査部
pp.46-49
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902737
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はじめに
微生物検査で取り扱われる検査材料は,対象となる感染症や感染部位などの違いに応じて実に多種多様であり,検査室に提出されてきたこれらの検体が適切に採取されたかどうかということは,“微生物検査レポートの診断的価値”を左右する最も根本的な要因である.
検体採取の基本は,感染徴候を伴う発病初期に,起因微生物が確実に存在する材料を,無菌的操作によって雑菌混入をできるだけ避けて採取することである.ただし,菌血症のように感染絶頂期における菌量がもともと少ない感染症や,感染病期における起因微生物の体内分布が変化する感染症(例えば,腸チフスでは発病初期は血液中から,数病日後は便で検出率が高くなる),あるいは慢性に推移した感染症の場合には,時期や材料を変えて数回の採取が行われる.また,抗菌薬投与に関しては,化学療法を開始する前に検体を採取しなければならないが,術後や免疫不全の患者では,抗菌薬投与が中断されることなく検体採取される例がみられる.抗菌薬投与後の検体では,抗菌薬不活化剤を用いることでその影響を回避できる場合もあるが,多くは菌検出率が低下することを覚悟しなければならない.
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