生体のメカニズム 体液調節機構・8
酸塩基代謝調節機構
花井 順一
1
,
高市 憲明
2
1東京大学医学部第一内科
2東京大学医学部第四内科
pp.725-728
発行日 1995年8月1日
Published Date 1995/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902476
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酸の産生と調節系
細胞外液のH+濃度の正常値は40nmol/l(40×10-6mmol/l,pH7.40)に維持されている.このH+濃度は他の電解質濃度の約100万分の1に相当し,かつ狭い範囲内に調節されている.これは生体に負荷されるH+に応じて排泄されるH+がバランスがよく加減されていることによる.生体に負荷される酸は,通常は食物摂取と細胞内代謝によるものである.この大部分は糖・脂質の最終代謝産物である揮発性(volatile)の炭酸(約15,000〜20,000mmol/日)で,肺より排泄される.他は蛋白に含まれる硫黄やリンの最終代謝産物である非揮発性(non-volatile)の無機酸(約50〜70mmol/日,1mEq/kg/日)で腎より排泄されている.このほか有機酸として乳酸やケト酸が糖代謝で作られるが,これらは中間代謝体であり正常では炭酸に代謝され血中に蓄積することはない.
体内に負荷される酸に対して,生体では緩衝系による化学的緩衝,肺胞換気によるPCO2の調節,腎臓によるHCO3-の調節が行われている.腎での調節は正確であるが日の単位と遅い.これに対し,細胞外液の緩衝,肺胞換気による調節,細胞内液による緩衝作用はそれぞれ秒,分,時間の単位で働いている.
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