明日の検査技師に望む
常に患者のいることを忘れることなく
新木 一夫
1
1白石臨床検査研究所
pp.308
発行日 1995年4月1日
Published Date 1995/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902285
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“検査される患者を父母と思い,検査材料は身を痛めて提出されたその父母の血と思い,日夜検査に精進されんことを”かつて私が大学病院の中央検査部(北海道大学)に勤務した当時の部長からよく言われた言葉である.
戦後日本もアメリカの医療制度の導入とともに,多くの医療機関で検査を合理的に,そして精度の高い方法ということで検査の中央化システムが進んだ.検査の中央化が進めば進むほど,検体検査は検査申込み用紙と検体とその検査報告書が診療側(患者)と検査室を往復し,検体の裏側に日夜悩み苦しんでいる多くの患者がいることを忘れがちな日常の検査業務の中にあって,この部長の言葉は私にとって忘れることのできない貴重な教訓としていつも脳裏に残っている.生理検査以外はほとんど患者と接する機会の少なくなった現在の検査システムのありかたを今一度考えてみる必要があるかもしれない.(病棟検査技師的な)検査室の自動化とコンピュータ導入が進めば進むほど,患者から遠ざかっていく傾向はますます強い感がある.
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