技術講座 微生物
感受性試験のための抗菌剤の基礎知識—[3]その他の薬剤
井上 松久
1
,
長曽部 紀子
1
,
島内 千恵子
1
,
井田 孝志
1
1北里大学医学部微生物学教室
pp.501-506
発行日 1994年6月1日
Published Date 1994/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902043
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化学療法剤は細菌に対するその作用のしかたから分類すると,殺菌力を発揮する薬剤と単に細菌の増殖を阻害するだけで菌数を減少させない薬剤とに分類できる.前者を殺菌的,後者を静菌的な薬剤とそれぞれいう.静菌的な作用を発揮する薬剤の細菌における作用部位は,蛋白合成にかかわる部位を標的とし,殺菌的な薬剤の標的は,DNAに直接作用するとか細胞壁の合成にかかわる部位である場合が多い.この分類に従うと,これまでに述べたβ-ラクタム剤やアミノグリコシド系薬剤あるいはキノロン系薬剤はいずれも殺菌的な薬剤であり1,2),今回述べるマクロライド系薬剤,テトラサイクリン系薬剤などの薬剤の多くは静菌的な薬剤のグループに属する.もちろん,静菌的な薬剤でも用いる薬剤の濃度が高いと殺菌作用を示す場合がある.
また,化学療法剤をヒト細胞内への透過ないしは浸透性の観点から群分けすると,やはり薬剤によってそれぞれに特徴がみられる.例えば,キノロン系薬剤やマクロライド系薬剤,テトラサイクリン系薬剤,トリメトプリムをはじめとしたサルファ剤系統の薬剤は,作用させた外液濃度に比べて細胞内濃度が高くなり,この点で細胞内に比較的取り込まれる薬剤に属する3).ところが,β-ラクタム系薬剤やアミノグリコシド系薬剤はヒト細胞内への透過はほとんどみられない.
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