増刊号 免疫検査実践マニュアル
各論
Ⅷ.感染症
4.真菌感染症(深在性)
阿部 美知子
1
,
大谷 英樹
2
,
久米 光
3
1北里大学病院臨床検査部
2北里大学医学部臨床病理学
3北里大学医学部病理学
pp.308-311
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901979
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真菌感染症(真菌症)は病型別には,皮膚科領域と内科領域の真菌症に二大別され,わが国で経験される内科領域の真菌症ではカンジダ症,アスペルギルス症,クリプトコックス症が主なものである.内臓真菌症はcompromised patientsの増加とともにその症例数が増加の一途をたどっているが,臨床的に確定診断される頻度は必ずしも高くはない.その理由として,①真菌はいずれも発育速度が遅く,培養陽性の成績を得るまでに日数を要し,報告が遅れること,②最も頻度の高いカンジダ症は内因性感染であり,分離培養されたカンジダの病原的意義づけを明確にできない場合があること,③病型として最も頻度の高い呼吸器感染症では喀痰中に喀出される起炎真菌の量が極めて少なく,病原の検出率が低値であることなど,培養法による検査学的診断に限界があり,培養検査成績を十分に臨床診断に反映できないことが大きな理由である.そこで内臓真菌感染症の補助的診断法として血清学的検査が利用されるようになり,初めは患者血清中の抗真菌抗体の検索が検討された.しかしながら,カンジダ症においては前述したように内因性感染であることから,非感染患者や健康者においても抗カンジダ抗体を保有する場合があり,沈降抗体の存在そのものがカンジダ感染症を示唆するものではない.また,カンジダ抗体価の上昇は診断に有益ではあるが,抗体価の上昇を観察し得るまでには一定の期間が必要であり,早期診断とはなり得ない.
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