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ネコひっかき病
浅野 隆司
1
1日本大学農獣医学部獣医薬理学教室
pp.371-372
発行日 1994年4月1日
Published Date 1994/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901863
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ネコひっかき病(cat scratch disease;CSD)は,その名の示すとおりネコやイヌなどの動物(ほとんどの場合ネコ,特に生後6か月以内の仔ネコ)に“ひっかかれる”,“かまれる”ことによって発症する疾患であり,現在注目されつつある人畜共通感染症(zoonosis)の1つである.CSDの原因微生物としてはウイルス,リケッチア,クラミジア,抗酸菌など種々の可能性が示唆されてきたが,1988年Englishら1)は多形性小型のグラム陰性桿菌がその1つであることを確認し,1991年にBrennerら2)によってAfipia felisと命名された.またさらに,1992年Regneryら3)は,リケッチアの1つであるRochalimaea henselaeもCSDの原因となりうることを報告している.
臨床症状は多くの場合,受傷部位およびその所属リンパ節に限局する.ネコにひっかかれたり,あるいはかまれたりした場合,3〜10日後にその受傷部位に紅斑を伴う丘疹が出現し,小膿疱あるいは水疱を形成したのち痂皮化し治癒する.この受傷部位の病変とは別に,受傷(感染)後平均1〜2週間以内に受傷部位の所属リンパ節(腋窩,頸部,腰部など)の疼痛あるいは圧痛を伴う腫脹が認められるようになる.一側性単発の腫脹が最も多く,多発性まれに両側性もみられる.
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