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連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・16
バルトネラ感染症(ネコひっかき病)
Ocular bartonellosis(Cat-scratch disease)
有賀 俊英
1
,
北市 伸義
1
,
大野 重昭
1
Toshihide Ariga
1
,
Nobuyoshi Kitaichi
1
,
Shigeaki Ohno
1
1北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座眼科学分野
pp.1048-1052
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102302
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はじめに
ネコひっかき病は古くから知られていた疾患である。ネコにひっかかれたあと,まず受傷部位の発赤,腫脹,その後所属リンパ節の腫脹,圧痛が出現し,発熱や全身倦怠感などを伴って発症する。多くは自然軽快するため予後良好な疾患と考えられているが,重症例では肝脾腫や脳炎などを生じることがある。またAIDSなどの免疫不全患者に生じた場合には細菌性血管腫症を引き起こし,致死的な経過を示すこともある。眼科的にはParinaud眼腺症(Parinaud oculoglandular syndrome)として知られる濾胞性結膜炎や視神経網膜炎を引き起こす。
Parinaud眼腺症は,1889年にParinaud1)が初めて報告した発熱と所属リンパ節腫脹を伴う結膜炎である。その後この疾患の原因としてさまざまな病原体が報告されたが,1950年頃からParinaud眼腺症とネコとの接触歴の関連性が指摘されはじめ2,3),1953年にCassadyら4)によりParinaud眼腺症とネコひっかき病との関連が報告された。現在ではParinaud眼腺症のほとんどがネコひっかき病によるものと考えられている。また視神経網膜炎との関連も,1970年のSweeneyら5)による報告以降多くの報告がなされている。
近年その病原体がBartonella henselaeであることが判明し,血液検査でB. henselaeに対する抗体価を測定できるようになった。その結果,不明熱や原因が特定できなかったリンパ節腫脹のうちいくつかは本症が原因であることがわかり,ネコとの直接接触がなくても本症の発症があり得ることもわかってきている。
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