増刊号 尿検査法
II.各論
16.腎機能検査
(4)尿酸性化試験,炭酸水素ナトリウム負荷試験
荒井 純子
1
,
二瓶 宏
1
1東京女子医科大学第四内科
pp.176-177
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901111
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腎尿細管での酸排泄は重炭酸(HCO3)の再吸収とHの排泄によって行われる.表に示したような臨床症候に加えて,糸球体機能低下の程度に比例しない高クロール(Cl)性代謝性アシドーシスのある場合に腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis;RTA)が疑われ,尿細管間質性腎炎に伴う場合も多い.本稿では図1のRTA診断過程の第2段階に示した尿酸性化試験および炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)負荷試験を中心に述べる.
蛋白代謝などで生じた不揮発性の酸(1mEq/kg/日)は腎排泄により調節を受ける.糸球体で濾過されたHCO3の90%近くは近位尿細管で再吸収され,H分泌と密接に関係する.すなわち,近位尿細管内では炭酸脱水酵素(carbonic anhydrase;CA)によりH2CO3がCO2とH2Oに分解され,CO2は細胞内へ入りCAによってH2CO3になること,細胞内H2CO3はHとHCO3に分解され,HはNaとの交換により管腔に分泌され,HCO3は血管系に入ることが重要な点である.一方,遠位尿細管では,濾過された緩衝物質であるHPO4や主として近位尿細管細胞で作られたNH3を滴定するため,管腔内pHを下げるようH分泌を行っている.この反応は遠位系へのNa供給量,電気化学的勾配,アルドステロンの作用により影響される.
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