増刊号 尿検査法
II.各論
3.尿蛋白
(3)尿中低分子蛋白—α1-ミクログロブリンを中心に
伊藤 喜久
1
1自治医科大学臨床病理学教室
pp.78-79
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901073
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はじめに
低分子蛋白質(low molecular weight protein;LMWP)は分子量5万以下の蛋白質群で(表1),正常状態では腎糸球体基底膜を容易に通過して血漿から濾過され,そのほとんどが腎近位尿細管において再吸収,異化分解されて,ごく一部が尿中に排泄されるにすぎない.尿細管が選択的に障害されると,再吸収,異化分解不全によってLMWPの排泄量が増加する.これに対して,アルブミンも含めて,これ以上の分子量の血漿蛋白質は糸球体からほとんど濾過されていないために尿中濃度は正常とほとんど変わりがない.このようにLMWPが高い比率で高濃度尿中に排泄される蛋白尿を尿細管性蛋白尿と呼び,LMWPの定性,定量分析がもっとも重要な適応となる.
ここでは,β2-ミクログロブリン(β2-microglobulin;β2-m)に次いで広く臨床的応用がはかられているα1-ミクログロブリン(α1-m)を中心に紹介する.「β2-ミクログロブリン」の項と対照しながら相補的に理解を深めてほしい.
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