今月の表紙
三次元画像による肝臓の組織構築(A:正常例,B:肝硬変)
高橋 徹
1
1東北大学抗酸菌病研究所病理学研究部門
pp.746
発行日 1991年8月1日
Published Date 1991/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900781
- 有料閲覧
- 文献概要
慢性肝炎やアルコール性肝障害などは進行すれば最後には肝硬変の状態に到達する.肝臓は結節といわれる球状の実質塊の集合によって置き換えられ,この肝硬変の肉眼像は極めて特徴的である.結節と結節の間,すなわち間質(または隔膜)は線維性の組織であって,ここはウイルス肝炎やアルコール性肝障害によって実質組織が壊死に陥った後に生じた瘢痕と考えてよい.結節は壊死を免れた実質が再生し,膨大することにより生じた構造で,再生結節と呼ばれることもある.
こういってしまえば簡単だが,慢性肝病変からの肝硬変の成り立ちにはまだわからない点が沢山ある.肝硬変になってゆく道筋は病理学では小葉改築と表現されており,「小葉改築傾向を伴う慢性肝炎」といえば,それを伴わない慢性肝炎よりは肝硬変に一歩近づいた状態とみなされる.このように,肝硬変とは正常の小葉構造からの偏り,あるいはその作り変えの過程と考えるべき病変であることは確かだが,実をいえば正常の肝小葉とはそもそもどのような構造か,この問題さえ解決がついておらず,とても改築の実体に迫るところまではいっていない.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.