明日の検査技師に望む
信頼される検査室を創れ
林 康之
1
1順天堂大学医学部臨床病理学教室
pp.1282
発行日 1990年9月1日
Published Date 1990/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900371
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わが国で最初の臨床検査技師はどこで,どんな人であったかと詮索すると,多くの先輩の先生方は陸海軍の病院か軍医学校の技手,現在でいう検査技師であろうと推定される.ところが明治以来の医史学に詳しい金沢医大の寺畑教授は,明治20年頃順天堂医院で働いておられた田中義雄氏であろうといわれ,『順天堂史・上巻』(昭和55年)にも記録されている(また同氏は臨床必携『鏡検図鑑』という著書も出版した).つまり,臨床検査技師は現在のような国家試験免許もなければ,養成施設がなくとも職業として存在しえたのである.ただ,昭和20年以前の病院では,たとえ大学病院であっても検査が医局単位で行われ,その大部分は無給医師の労力でまかわれていたために専門技術員の需要が少なく,検査も現在に比べて種類も件数も非常に少なかった.しかし,医局の検査技術員は当時新入医局員に熟練技術を教え,時には教授回診のとき医局員のデータよりはるかに威力を発揮し,若い医師からは一目も二目も置かれる存在だったのである.
この話は若い技師諸君に時代錯誤だ,そんな名人技師ばかりいても現代には役立たないだろう,と反論されるであろう.私自身もその通りであると思うが,この技師という言葉を院内中央検査部(室)と置き換えてみてほしいのである.
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