増刊号 血液・尿以外の体液検査法
5 乳汁
E.細胞診
石井 保𠮷
1
,
藤井 雅彦
1
1東京都がん検診センター細胞診
pp.593-596
発行日 1990年5月15日
Published Date 1990/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900169
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はじめに
昭和62年度から乳癌検診が老人保健法に組み込まれた.老健法の目的は,早期乳癌の発見または完治可能な乳癌の効率的な検出にある.検診の流れには,一次検診として問診,指診,触診があり,二次検診に超音波,軟X線乳房撮影が行われている.また諸検査の後,腫瘤を触知するものには積極的に針吸引細胞診が施行され,80〜90%という高い陽性率が得られている.これは針吸引にて採取された細胞に対する客観的な判定基準が設置されたこと,および細胞判定に必要かつ十分量の細胞成分が得られるようになったことによると思われる.
しかし,針吸引細胞診の高い評価に対し,乳頭分泌物細胞診における検査の位置づけは高いとは言い難い.これは,全乳癌患者中の乳頭分泌を認める頻度が7〜10%と低いことに加えて,陽性率が30〜50%と針吸引細胞診に比較して著しく低いことに起因していると思われる1,2).陽性率が低い原因としては細胞量・細胞の変性および乾燥など種々の因子が考えられ,これらの点を改善していくことが分泌物細胞診の精度向上のために必要であろう.
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