検査ファイル
〈用語〉癌遺伝子
笹栗 靖之
1
1久留米大学医学部第2病理学教室
pp.246-248
発行日 1990年3月1日
Published Date 1990/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900072
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[1]細胞周期と培養細胞
成人の体の細胞は,まったく分裂しないもの,常に分裂・増殖を繰り返しているもの,刺激(例えば創傷)に応じて分裂・増殖を始めるものがある.増殖能のある細胞は,in vitroで培養,継代が可能である.増殖している細胞は,G1期(蛋白合成期)→S期(DNA合成期)→G2期→M期(細胞分裂期)→G1期と周期を繰り返している.正常細胞の培養には,通常,ウシ胎児血清が不可欠であり,この血清の添加を省くと,細胞は静止期(G0期)に入るか,死滅する.G0期の細胞は,血清の添加により,再びG1期に入り,周期を回り出す.しかし,血清の添加を続けても,正常細胞は,約40代ほどで分裂,増殖を停止する.反面,癌細胞は,永久的に分裂を繰り返し継代培養することができる.これらの事実から,次の疑問が生じた.
1)細胞周期を調節している機構(蛋白とその働き)はどのようなものか.2)ウシ胎児血清内に存在する増殖因子は何か.3)正常細胞と異なり永久的に増殖できる癌細胞のメカニズムについて.
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