トピックス
悪性リンパ腫のリキッドバイオプシー
島田 和之
1
,
清井 仁
1
1名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学
pp.770-773
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543209386
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はじめに
悪性腫瘍が遺伝子異常の蓄積により生じることが明らかにされて以来,さまざまな遺伝子異常が悪性腫瘍の多様な病態に関与していることが判明した.造血器悪性腫瘍も例外ではなく,その多くが成熟リンパ球の腫瘍である悪性リンパ腫についても,多様な病態と遺伝子異常との関連が網羅的遺伝子解析により明らかとなった.そのため,病態を正しく診断・理解するために遺伝子異常を明らかにすることの重要性が増しているが,遺伝子解析のためには,通常は腫瘍組織検体が必要となる.
しかし,悪性リンパ腫では,中枢神経や腹腔内など必ずしも組織生検が容易でない部位に病変が形成される.必然的に針生検をはじめとする侵襲性を抑えた生検法が選択されるが,検体量が限られるため,遺伝子解析に必要な十分量の検体が得られないことも多い.また,複数存在する全ての病変から検体を得ることや短期間に経時的に組織生検を行うことは,侵襲性の観点から許容されず,組織生検には時空間的に一部の検体を解析するという限界がある.
そこで,直接的な組織生検の代わりに体内の腫瘍を把握するための手段としてリキッドバイオプシーが着目されてきた.リキッドバイオプシーは体液,すなわち血液,髄液,胸腹水,尿,唾液などに含まれる腫瘍組織由来の成分を抽出し,解析を行う手法である.特に血液には,腫瘍細胞のみならず腫瘍組織由来のDNAやRNAなどが含まれることが分かっており,近年これらを利用して組織生検の代替として遺伝子解析を行う手法が急速に確立されてきた.
本稿では,最近の悪性リンパ腫のリキッドバイオプシーについて遺伝子解析の観点から概説する.
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