増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド
3章 検査プロセス
網血小板/幼若血小板分画
金子 誠
1
1三井記念病院臨床検査部
キーワード:
網血小板
,
幼若血小板比率
,
血小板減少症
Keyword:
網血小板
,
幼若血小板比率
,
血小板減少症
pp.938-941
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543209084
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網血小板と幼若血小板分画
網血小板(reticulated platelets:RP)1-3)は,骨髄から末梢循環に新たに放出されたばかりの血小板分画である.このRPの数は血小板造血(thrombopoiesis)が亢進することに伴って増加して,また産生低下に伴い減少することから,血小板造血の指標として用いられる.骨髄中では,RP数は末梢血の平均2〜3倍程度存在して巨核球の数と相関しており,巨核球形成(megakaryopoiesis)の状況を反映したマーカーでもある.このように骨髄における巨核球形成・血小板造血を反映していることが,赤血球造血を反映する網(状)赤血球(reticulocytes)の境遇に類似していることから,網(状)血小板と呼ばれる.
これらRPを含む未熟・幼若な血小板は,成熟した血小板に比べて細胞容積が大きく,RNA量や血小板内顆粒を多く含んでいる.RPのRNAは,巨核球RNAの名残とも考えられていたが,血小板内でもこのRNAによりタンパク合成されていることが示されており,成熟した血小板と比較して反応性が高い血小板である.RPは定常状態で全血小板数の約5%で,24〜36時間程度でRNA分解が進行し,体積が減少するとされる.この“若い”血小板と“成熟した”血小板については,全く異質なものを明確に区別しているわけではなく,血小板の大きさや,含有するRNA量など連続性のある対象物についてカットオフ値(RNA量や血小板の大きさ)を用いて恣意的に区別しているのである.
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