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はじめに
2019年9月に,厚生労働省から「測定系にビオチンを用いる体外診断用医薬品の添付文書の自主点検等について」(薬生安発0912第4,5,6号)が通知されたことをご存じでしょうか?
簡単に言うと,“ビオチン”が検査結果へ影響を及ぼすことについての通知内容です.“健康ブーム”到来中のわが国において,健康食品やサプリメントの需要ニーズはとても高いといえます.一昔前はビタミンCやカルシウム補給程度のものでしたが,近年では美容と健康,万病治癒,はたまたアンチエイジング(抗加齢)など,万能薬さながらの効能を期待してサプリメントなどを摂取している方は多いのではないでしょうか.
そのなかで近年,美容や健康維持を助ける栄養素として高濃度のビオチン(ビタミンB7)を含有するサプリメントなどが,海外直送品として市販されています.皮膚や粘膜の健康維持を助けるサプリメントとして,日本国内で販売・流通可能なビオチンサプリメントは,ビオチンの含有量が1錠当たり最大500μgと法律で定められています.しかし,海外ではビオチンの含有制限がなく,1錠当たり1,000〜5,000μgのビオチンを含んでいる錠剤も流通しており,ネット販売などで購入が可能です.その一方で効果を期待して摂りすぎると,危険性も増します.また,服用している医薬品と臨床検査原理の相互作用で,思わぬ誤診(インシデント)が発生することもあり得ます.
免疫血清検査における測定原理の反応系にビオチンが使用されている検査試薬では,患者検体中に過剰のビオチンが存在すると,測定項目によっては低値または高値を示す可能性が指摘されました.このことにより,高濃度および多量のビオチンを摂取している患者からの採血は,一定期間経過してから実施することが望ましいと注意喚起がなされました.
本稿では,ビオチンについて復習し,ビオチンによる臨床検査値への干渉について事例を交えて考えてみようと思います.
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