増刊号 現場で“パッ”と使える 免疫染色クイックガイド
Column
Column.5 免疫染色愛は国境を越え……られるのか!?
pp.1082
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207354
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“三度の飯より免疫染色”を掲げていた私の愛が,あるとき国境を越えることとなった.日本の免疫染色,病理診断を伝道するというお仕事をいただいたのである.どこへ伝道?ということだが,縁あってバングラデシュ第2の都市チッタゴンへ.
バングラデシュは世界の中でも最貧国の1つであり,大学病院ですら物資,人材,資金全てが不足している.“免疫染色!? ぜひとも教えてくれ!”と,キラキラとしたまなざしで見つめられ懇願されたものの,それどころではない.パラフィンも,ミクロトームの替え刃を買う資金もなく,パラフィンブロックはHE染色標本を一度作製してしまうとその直後に溶かし,次の患者のブロックを作るために再利用するありさまである.ミクロトームの刃を交換していないため,傷だらけでボロボロ.固定時には飲食物の空き瓶に少量のホルマリンらしき透明の液体が入れられているが,組織片は1/3程度の高さまでしか液体に浸っておらず,上部2/3は乾燥状態.いつから固定? 乾燥? されているかも不明であった.彼らがHE染色と主張する染色も安物で粗悪な試薬を使用しているため,染色後の色調も変.固定の影響なのか試薬の影響なのか……原因追及さえ難しい.そんな免疫染色どころではない現場にがくぜんとしたことを覚えている.
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