増刊号 現場で“パッ”と使える 免疫染色クイックガイド
Column
Column.4 免疫染色の結果は治療選択に直結する!
pp.997
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207336
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近年,分子標的治療薬の進歩が顕著である.従来の抗癌剤は増殖能の高い細胞を攻撃するため,正常であっても増殖能の高い骨髄や粘膜などの臓器も傷害を受け,副作用が現れる.頭髪が抜ける副作用もこのためである.しかし,分子標的治療薬は標的を狙って抑える(攻撃する)ため,副作用が少ないことが特徴として挙げられる.この分子標的治療薬の適応か否かも,免疫染色の結果から導くことができる.現在,免疫染色は病理診断の補助的手段としてだけでなく,患者の治療薬・治療方針選択の一助としても重要な役割を担っている.
また,近年患者検体から癌の原因となる遺伝子を見つけだす“クリニカルシーケンス”も始まった.癌は複数の癌遺伝子や癌抑制遺伝子の変異が積み重なって発症へつながる.この癌の発症にかかわる重要な遺伝子はドライバー遺伝子と呼ばれ,ドライバー遺伝子から産生される蛋白の機能を抑えることで治療するのが分子標的治療薬である.分子標的治療薬は日本では原発臓器別に使用できる薬剤が決められている.例えば,トラスツズマブ(ハーセプチン®)は乳癌と胃癌にのみ使用が認められており,保険適用で治療することができる.しかし近年,ハーセプチン®の投与により腫瘍が縮小した肺癌症例が海外で報告された.それに伴い,“臓器別ではなく遺伝子異常に基づいて薬剤が選択されるべきだ”という考えが生まれた.
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