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腎臓領域の再生医療に関しては,他の臓器に比較してその報告も少なく,遅れていると言わざるを得ない状況であった。しかしながら,増加を続ける慢性腎臓病患者に対し,腎臓再生療法の開発が期待され,また急務と考えられている。わが国において透析療法を必要とする末期腎不全患者数は30万人以上,透析医療費は年間1兆5,000億円(全医療費の約4%)を超える。毎年3万人以上の新規透析患者が生じる一方,根治的な治療法である腎移植は年間1,500例程度で,その多くは生体腎移植である。腎移植希望患者数12,000名に対し,献腎移植は年間約200例(約1.6%)と需要に対して供給が全く追いついていない状態である。筆者らは,主にヒトiPS細胞(induced pluripotent stem cell;人工多能性幹細胞)を用いて,試験管内で腎臓を再生することにより,移植に提供できる細胞を作ることや,新しい治療薬を開発することを目的とし研究を行っている。最近,筆者らを含む複数の研究グループから,ヒトiPS細胞やES細胞(embryonic stem cell;胚性幹細胞)を用いた腎臓系譜への分化誘導法に関する報告が相次いでいる。生体内のすべての細胞種に分化することが可能な多能性幹細胞であるES細胞と,簡便な遺伝子操作によってES細胞とほぼ同等の性質を有するiPS細胞が樹立可能となり1),再生医療の研究が大きく進展した。また,最近ではヒトiPS細胞を用いた臨床研究も開始されている。これらの幹細胞を用いて腎臓系譜への分化誘導法を開発し,腎臓再生療法に応用することが非常に期待されている2)。本稿では幹細胞を用いた腎臓再生の研究について,最新の知見を中心に概説する。
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