Laboratory Practice 〈病理〉
—成人型エオジン好性核内封入体病の診断—電子顕微鏡所見の有用性
長谷川 文雄
1
,
村山 繁雄
2
1(独)東京都健康長寿医療センター研究所 老年病理学研究チーム(電子顕微鏡室)
2(独)東京都健康長寿医療センター研究所 神経病理学研究(高齢者ブレインバンク)
pp.1286-1290
発行日 2017年11月1日
Published Date 2017/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206995
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はじめに
神経核内封入体病/エオジン好性核内封入体病(neuronal intranuclear hyaline inclusion disease:NIHID)は,神経細胞核内の好酸性封入体形成を特徴とする,原因不明のまれな神経変性疾患である.1980年Sungら1)が初めて記載し,その後2003年Takahashi-Fujigasaki2)によって,幼児型,若年型,成人型の3型に分類された.成人型NIHIDは,60〜70歳代に行動異常や認知機能障害で発症することが多い.核内封入体病は特徴的な頭部MRI(magnetic resonance imaging)所見を呈し,全身の臓器で核内封入体が観察されるため,一般的に採取が容易な皮膚生検により診断される3〜5).
核内封入体は光学顕微鏡的にHE(hematoxylin-eosin)染色や免疫組織化学染色で同定できるが,電子顕微鏡的に特異的な微細構造を確認することが重要である.皮膚では線維芽細胞,汗腺細胞,平滑筋細胞,脂肪細胞,シュワン細胞(Schwann cell:SC)など多様な細胞で核内封入体が観察されうるが,電子顕微鏡的には真皮の汗腺細胞で最も観察しやすい.
当施設では,他施設からの依頼を含め約80例の皮膚生検検体を電子顕微鏡的に検索してきた.本稿では,電子顕微鏡的な検索手順を紹介しながら,代表的な症例を提示する.
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