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エピネット日本版とは
医療従事者は日常業務において,患者の血液や体液で汚染された注射針,メスなどの鋭利器具によって皮膚を損傷するリスクがあり,血液媒介病原体であるB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV),C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV),ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)などは血液・体液が直接体内に侵入することによって感染伝播するリスクが存在する.このような針刺し切創は,医療従事者の労働災害であって,未然に防止することが極めて重要である.医療現場では誤刺防止機構付きの鋭利器材,いわゆる安全器材を導入したり,鋭利器材の使用中および使用後にも最大限に注意を払うとともに,使用後はリキャップせず,耐貫通性廃棄ボックスに捨てるなど,基本的な対策を徹底すべきである1)が,より具体的に現場レベルの対策を進めるためには,針刺し切創などの血液・体液曝露の事例を収集して発生状況を体系的に解析することが必要である.
エピネット日本版は,医療従事者の針刺し切創,血液体液曝露の発生時にその状況を報告するために使用する標準的書式であり,職業感染制御研究会が開発してホームページ2)上に無償で公開している.エピネット日本版の書式は,米合衆国バージニア大学国際医療従事者安全センターのJanine Jagger教授(Becton Dickenson Professor of Health Care Worker Safety)が1991年に開発したEPINetTM(Exposure Prevention Information Network)2)に基づいて,わが国の状況を考慮して開発された.日本国内では日本ベクトン・ディッキンソン社の厚意によって版権が放棄されており,現場の状況によって適応させた内容となるように,職業感染制御研究会による改訂が繰り返されている.なお,オリジナルのEPINetTMも,針刺し切創,血液体液曝露の防止に有用な情報を収集する有用な報告書式として米合衆国の1,500以上の施設で導入されており,さらにはイタリア,スペイン,カナダ,イギリス,台湾,韓国,オーストラリア,ニュージーランド,ブラジルなど,世界各国でも活用されている.
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