増刊号 採血のすべて—手技から採血室の運用まで徹底解説
Ⅳ 採血合併症と予防・対応法
採血に伴う職業感染
笹原 鉄平
1
1自治医科大学医学部感染免疫学講座臨床感染症学部門
pp.290-295
発行日 2020年3月15日
Published Date 2020/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207922
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はじめに
採血手技では,患者への穿刺から始まり,血液検体の分注作業や検体分析に至るまで,検査者が血液に曝露される危険が常につきまとう.特に穿刺針を保持している間には,より問題となる針刺し・切創が発生しうる.患者の血液中には,なんらかの微生物が存在する可能性があり,細心の注意を払う必要がある.ここでのポイントは,“全ての患者に対して注意する”ことである.一昔前には,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)などが陽性の患者のみを“感染症患者”として個別に対応していたことを覚えている読者もいるかもしれない.しかし現在は“全ての患者が危険な病原体を保有している可能性がある”ことを念頭に,“全ての血液・体液は感染性のあるものとして扱う”ことを原則とする標準予防策(スタンダード・プリコーション)の実施が必須である1).
したがって検査者は,全ての患者の採血手技に際して手袋を着用し,患者ごとに手袋を交換しなければならない2).もちろん,採血前・採血後の手指衛生(擦式アルコール製剤を用いた手指消毒)も忘れずに行う.大人数を対象に採血を行う場合に,患者ごとに手袋を換えずに手袋を着用したまま手指衛生を行う検査者がいるが,避けるべきである.血液が付着した可能性のある手袋を消毒するにはアルコールでは不十分なこと3),アルコール製剤によって手袋が劣化し破れやすくなって危険なことなどが理由として挙げられる.
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