Laboratory Practice 〈微生物〉
β-D-グルカン測定法の原理と注意点
吉田 耕一郎
1
1近畿大学医学部附属病院安全管理部 感染対策室
pp.80-84
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205786
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
(1→3)-β-D-グルカン(以下,β-D-グルカン)は,ムーコルを除く全ての真菌に共通の重要な細胞壁構成成分の1つである.この点に着目して,わが国で深在性真菌症のスクリーニング法として開発されたのがβ-D-グルカン測定法である.
国内の深在性真菌症診療の現場では補助診断法の1つとして従来から広く使用され,一定の評価を受けてきた.一方で,β-D-グルカン測定における偽陽性の問題は以前から指摘されており,その有用性は限定的との指摘もある.しかし,近年では,2008年に改訂されたEORTC/MSG(European Organization for Research and Treatment of Cancer/Mycoses Study Group)の深在性真菌症診断ガイドライン1)や,2012年に公表されたESCMID(European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases)のカンジダ症のガイドライン(診断法)2)でもβ-D-グルカン測定が推奨されており,海外での評価も高まりつつある.
本項では,β-D-グルカン測定法の開発の歴史を紹介し,現在,国内で使用されているキットの測定原理を示す.そのうえで,β-D-グルカン測定の問題点を整理し,測定上,あるいは得られた数値の評価における注意点について概説する.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.