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血中TSH(thyroid stimulatinghormone:甲状腺刺激ホルモン)濃度の測定は甲状腺疾患の診断,治療に欠かすことのできないものであるが,最近,測定技術の進歩によりその重要性は著しく増加した.いわゆる高感度TSH測定法が開発される以前には,一般的にcompetitive radioimmunoassayで測定されていた.その方法は,放射性ヨード(125I)で標識されたヒトTSH(125I-TSH)と,家兎に免疫して得られたヒトTSHに対するポリクローナルの抗体,これに標準TSHあるいは検体血清とを混合し,125I-TSH,非標識TSHを競合させて抗体と結合させ,125I-TSHの結合の程度から検体血清中のTSH濃度を知る,いわゆる競合アッセイ(competitiveassay)であった.
この種のアッセイでは最小検出濃度は研究室レベルでは0.25μU/ml程度であり,日常検査レベルでは2μU/ml程度であった.しかし,数年前から①細胞工学の技術を用いてヒトTSHに対するモノクローナル抗体,特にTSHに特異的であると考えられているβ-サブユニットに対するモノクローナル抗体を作ることができたこと,②特異性の高い抗体を標識してTSH分子と特異的に結合させ,その標識体を検出する方法が進歩したこと,③チューブやビーズなどに抗体を均一にコーティングする技術の進歩から固相法が改良されたこと,これらの三つの点での大きな進歩から,固相法によるいわゆるサンドイッチ法が出現した.すなわち,ヒトTSHに対する特異的な抗体をチューブやビーズにコーティングしたものと検体血清中のTSHあるいは標準TSHと結合させ,その後洗浄した後(2ステップ法)あるいは洗浄しないで(1ステップ法)そのままさらに標識された抗体を加えて試験管中のTSHと結合させる.最後に十分に洗浄して固相化抗体・TSHの複合体と結合していない標識抗体を除去した後,標識体を計測するものである(図).したがって,原理的には計測機器の精度がよければ固相化抗体に結合した1分子のTSHでも測定できるはずであるが,実際には0.01μU/ml程度が最小検出濃度となっている.
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