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アニサキス症
大友 弘士
1
1岐阜大寄生虫学
pp.1541-1542
発行日 1989年11月1日
Published Date 1989/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205756
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1987年11月,名古屋での公演中にサバズシを食べた著名な俳優がアニサキス症に罹患し休演せざるをえなくなったことが,マスコミに流布される事例があった.そのため一躍有名になったアニサキス症は,本来イルカなどの海産哺乳類の胃に寄生するAnisakis属線虫の幼虫がそれを保有する海産魚やイカの生食によって人体に感染し,思わぬ消化器症状を呈する幼虫移行症の一つで,日本人の食習慣が感染要因であることから患者数の多い疾患になっている.
本症は古くからあったものと思われるが,原因が明らかにされたのは比較的近年のことである.すなわち,塩漬ニシンを食するオランダから1960年にvan Thielらによって初めて報告され,わが国では1964年に第1例が報告されるや否や同様の感染者が少なからずみられることが契機ともなり,本症や病因種に関する研究が精力的に展開され,数々の知見が蓄積されるに至った.
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