けんさアラカルト
私の職場は工場
伊藤 耐子
1
1聖園病院検査科
pp.1326
発行日 1988年11月1日
Published Date 1988/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205481
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1年ほど前のことになるでしょうか,病院から緊急連絡が入り,至急,検査をしてほしい,というのです.当日は当番の予定でなかったので,家には誰もいませんでした.子供を一人おいていけず,しかたなく子供同伴で出かけました.検査室へ入った彼女は私のするようすをじっと見ていて,最後に「ママって工場みたいなところでお仕事しているんだね」とポツリと言いました.考えてみれば,ボタンばかりがずらずら並んだ機械とコンピューターの紙の山の中という,実に人間味のないところで毎日仕事をしているわけで,彼女の目には普通の工場のように見えたのもむしろ当然な気がしました.
昨年,第7回日本臨床化学会夏期セミナーにおいて,現在の検査室の姿を振り返り問題点を整理し,今後の検査室のありかたを考えるために,医師,検査技師,患者にアンケート調査を実施し報告しました.その師のアンケートの中に「検査技師はもっとベッドサイドに来て,患者の痛みを感じながら検査をすべきだ」という意見がありました.まさにこの言葉が今の検査室の問題点をすべて語っているのではないかと思います.そのアンケートの中から問題点を二,三ピックアップして少しまとめてみたいと思います.
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