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膵臓特異抗体を用いる膵疾患の診断
中山 年正
1
1虎の門病院
pp.440
発行日 1981年5月1日
Published Date 1981/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205330
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膵臓の病気は我が国でも年々増加の傾向にあり,アルコールやコーヒーの摂取,高脂肪食などの食生活との関連が考えられている.代表的な疾患は激烈な痛み(狂躁痛などと言う)を伴って発症する急性膵炎であるが,膵線維症,膵石灰化などの慢性膵炎では鈍痛,背部痛,消化不良など症状が非特異的であり,膵癌では黄疸によって発見される例もあるが,多くは進展するまで気付かれない.超音波,X線などの形態学的検査やPSテスト(パンクレオザイミン・セクレチンテスト)などの内視鏡的機能試験も有用であるが,検査の性質上,上記のような非特異的症状の患者のすべてに実施するわけにはいかない.
血中に遊出する膵外分泌酵素やその阻害剤(アミラーゼ,リパーゼ,トリプシン,DNaseI,RNase,トリプシンインヒビター)が従来から検討され,膵アミラーゼ,膵リパーゼの有用性はほぼ確立しているが,膵アミラーゼのみを迅速に分析する技術は十分に確立されたとは言えず,また,アミラーゼ・リパーゼともに生体内寿命(クリアランス)が早く,急性膵炎でも発症の2〜4日,慢性膵炎では線維症のように進行するとかえって低値となり診断の価値が下がる.RNaseは膵癌のマーカーとして最近注目されているものであるが,分子量が小さく腎機能の影響を強く受け,また測定方法に問題があり日常検査に至っていない.
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