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Mycoplasma pneumonine(マイコプラズマ)は,上気道炎,気管支炎,肺炎の起炎病原体として頻度が高く,時として呼吸器や神経系の合併症を伴って経過が遷延化し,重篤化することが知られている.またLegionella(レジオネラ菌)は広く環境内に分布し,感染防御能の低下した,いわゆるimmunocompromised hostの肺炎の起炎病原体として見られることが多く,種々の基礎疾患を有する入院患者に予想以上に発生しているものと考えられる.このため早期診断が必要であり,診断検査法の普及が望まれる.しかし,M. pneumoniae,Legionellaともに分離にかなりの日数を要し,しかもその分離培養には特殊な培地や,やや煩雑な手技を要するため,多くの施設で培養検査がなされていないのが現状である.
近年の分子遺伝学の進歩に伴い,特定性状の支配遺伝子を含むDNAプローブを用いたDNAハイブリダイゼーション法によって病原体を検出,同定しようとする試みが多くなされてきており,M. pneumoniae,Legionellaの検出にも応用されている1〜5).感染症の診断に利用される特異的なDNAプローブは,従来32Pや125Iなどの放射性アイソトープで標識されていることが多く,その処理に特殊な設備が要求されるなど,広く一般には普及していない.しかし近年,フォトビオチン法6)やペルオキシダーゼ・グルタルアルデヒド法7)などの開発により非放射性物質でのDNAの標識が可能となりDNAプローブの使用が容易なものとなってきた.ハイブリダイゼーションに用いる標識DNAプローブは特異的であることが望ましいことはもちろんであるが,特異プローブの開発,作製は容易ではないため,菌体から抽出したDNAのすべてを標識プローブとして用い,ハイブリダイゼーションを行う方法もとられている8,9).
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