感染症の検査法 Ⅲ 検査法各論
[7]薬剤感受性検査
1 序論
辻 明良
1
1東邦大学医学部微生物学教室
pp.866-872
発行日 1989年5月15日
Published Date 1989/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205061
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感受性検査とその背景
臨床検査における感受性検査の目的は,感染症の治療に適切な抗菌薬を選択することにある.その方法には,感受性の有無を定性的に調べる方法と,菌の発育あるいは殺菌に及ぼす濃度を定量的に調べる方法とがある(表1).前者には薬剤含有ディスクを用いる拡散法(感受性ディスク法)があり,簡便で迅速性であるため,日常の検査室で広く使用されている.後者は薬剤の希釈系列を作って行うMIC測定法(最小発育阻止濃度;minimal inhibitory concentration),MBC測定法(最小殺菌濃度;minimal bactericidal concentration)があり,さらに菌の形態,増殖率に影響を及ぼす最小濃度を求めるMAC(minimal antibiotic concentration)測定法がある.特にMIC測定は,薬剤の選択のほか,多数菌株の感受性分布,抗菌薬相互の抗菌力の比較,抗菌スペクトルの決定などに用いられるが,手数がかかるため,臨床検査室ではあまり用いられていなかった.しかしMIC値などは薬剤の体内動態のデータとの関連において,臨床効果を推定するのに有用であり,近年では自動機器やフローズンプレートにして簡単に行えるので,検査室でもMIC,MBCを測定する方向にある.
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