Japanese
English
特集 ミトコンドリア脳筋症
序論
Introduction.
杉田 秀夫
1
Hideo SUGITA
1
1国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部
1Division of Neuromuscular Research, National Institute of Neuroscience
pp.565-566
発行日 1987年8月10日
Published Date 1987/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905907
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I.ミトコンドリア―歴史的背景―
ミトコンドリアは高等動物から細菌,あるいは植物細胞に至るまで,生物が生きていくために必要なエネルギー源であるATPを産生する細胞内小器官である。歴史的にはミトコンドリアと考えられる細胞内構造物の最初の記載は1840年,すなわち細胞の核の発見の数年後といわれているが,1890年Altmannはこの構造物はバクテリアに似ており,細胞に普遍的に存在することを記載し,"bioblast"と名づけた。そして細胞の中にあって"elementary organisms"として機能していると報告した。
現在用いられているミトコンドリアという名称は,1898年Bendaによって命名された。それはギリシャ語の"mitos"(thread)と"chondros"(granule)に由来している。ミトコンドリアの研究は,形態学的には1953年Sjöstrand,1955年Paladeにより,各々独立に電子顕微鏡を用い膜性の袋状構造を有することが指摘された。ミトコンドリアは外膜と内膜の二重構造からなる0.4〜4μの小器官であり,生体内のエネルギー源であるATPの酸化的燐酸化による産生を主な役割としている。内膜は複雑に入り組んでクリステを形成し,内膜の内側はマトリックスになっている。
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