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伝票制度の解説
中沢 恒三良
pp.4-16
発行日 1954年5月1日
Published Date 1954/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200811
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緒言
医療に要する費消材料の使途が明確にされ,診療報酬の請求が正当に行われることは,病院会計上重要な事柄である。医療用材料を費消する病棟治療室と,報酬請求事務の行われる場所が距つておること,診療業務に携わる人が多いこと等が原因となつて,事実上,上記の業務は実現が困難な業務の一つである。大病院になればなる程その困難性は増大する。診療業務と記録,職域間の連絡が確実に而も円滑になされることが要求されるが伝票制度はそれに応えるものといえよう。
従来の慣例によつて行われている材料費消請求業務は,両者ともその大部分を医療従事者に依存していた。診療に材料を費消すれば記録をつける,記録にあれば請求のための集計は可能であろうということで,医療従事者がこの集計業務を分担させられ,苦しんでいた。これを伝票制度に切換えることにより,会計のための業務分担がなくなり診療行為を報告するための伝票発行の責任のみとなり,釈然とした気持で事務負担の軽減を,それだけ診療に振り向けることが出来るようになつた。近時この制度が各地で研究され,統計にも利用されることがわかり,その価値が認められて,病院管理に必要な制度と見做されるようになつて来た。当埼玉診療所に於ては伝票制度を採用してから既に1年半を経過したので,得た経験を纏めて解説として発表することとした。
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