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心筋症(cardiomyopathy)の概念は,臨床的,病理学的に幾多の歴史的変遷を経たが,1980年,WHO(世界保健機構)・ISFC(国際心臓連合)合同委員会は本症を原因不明の心筋疾患と定義し,これを,①拡張型心筋症,②肥大型心筋症,③拘束型心筋症の3型に分類した1).わが国では,心筋症は1962年,厚生省特定疾患(いわゆる難病)の一つに指定され,同時に特発性心筋症調査研究班が編成され,以後,疫学,病因,病理,病態生理,予後,治療などに関する知見がしだいに明らかにされて現在に至っている2).なお,心筋症は原因不明を意味する「特発性」という接頭語をつけて,特発性心筋症と呼ばれる場合もあるが,両者とも同じ疾患を意味し,上記の厚生省調査研究班もWHO・ISFC合同委員会による心筋症の定義と分類を採用している(表).
心筋症は定義から明らかなように,原因の明らかな心臓病を除外して診断される(表).一般に心臓病の臨床診断は,①病歴,②身体所見と血液検査,③心電図,④胸部X線,⑤心エコー図,さらに必要があれば,⑥心臓カテーテル検査,心血管造影,心内膜心筋生検,心臓核医学検査などを駆使して行われ,原因の明らかな場合として,虚血性心臓病,高血圧性心疾患,先天性奇形,弁膜症,肺性心,内分泌性心疾患,貧血などによる心筋異常が診断される.また比較的まれであるが,原因あるいは他疾患との関連が明らかな特定心筋疾患(specific heart muscle disease;表)と呼ばれる一群の病気がある.これには心内膜心筋生検法が診断に有力とされる心筋炎,アミロイドーシス,Pompe病,ヘモクロマトーシス,Fabry病,サルコイドーシスなどが含まれる.
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