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Kupffer細胞の免疫への関与
谷川 久一
1
1久留米大第二内科
pp.1122
発行日 1986年9月1日
Published Date 1986/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203859
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Kupffer細胞は肝臓の類洞壁に存在する細胞で,肝臓の固有のマクロファージ(liver-fixed macrophage)と考えられている.この細胞はその胞体を類洞腔に突出させ,細胞表面から大小の細胞突起を出し,類洞を流れる異物の取り込みを容易にしている.すなわち,この細胞は流血中を流れるもろもろの異物を取り込み(endocytosis),これを処理する機能をもっている.
この細胞に取り込まれるものは,エンドトキシン,免疫複合体,細菌,ウイルス,細胞片,酵素など種々であるが,ことにこの細胞は,門脈から入った血流が大循環に至る途中に存在することの意義が重要である.すなわち,腸管からは栄養物とともに,エンドトキシンなどの有害物質や,時には腸内細菌なども混って入ってくるが,この細胞により取り込まれ処理されてしまう.エンドトキシンは種々の生物学的活性を有しているので,このKupffer細胞の機能が十分でないと,エンドトキシンが大循環に入りエンドトキシン血症を生じ,ショック,DIC(播種性血管内凝固症),腎障害など多臓器不全の原因となる.劇症肝炎のように肝の広範な壊死がみられる場合や,肝硬変症で肝でのKupffer細胞の数の減少に加えて副血行路が形成されて,肝を経ないで門脈血が直接大循環に流れるような場合に,エンドトキシン血症がしばしばみられる.また流血中の免疫複合体も,主としてこの細胞で取り込まれ処理される.この免疫複合体は腎障害をはじめ種々の全身性の病変を起こすことが知られているので,この点からも同細胞の機能の重要性がわかる.
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